東島 沙弥佳
(経 歴)
【職歴】
2014年−2017年 京都大学大学院理学研究科 研究員
2016年−2017年 滋賀県堅田看護専門学校 非常勤講師
2017年−2018年 龍谷大学 非常勤講師
2017年− 現職 (大阪市立大学大学院医学研究科 助教)
現在の仕事内容は?
私は現在、大阪市立大学大学院医学研究科の教員を務めており、仕事内容は大きく分けて教育と研究の2つです。
まず教育についてですが、解剖学講座の一員として主に実習系科目を担当しています。当大学医学部では、2年生に対して骨学・組織学・解剖学など医学の基礎に関する講義を行います。数ある講義の中で、教員・学生ともに最も時間と体力を要するのが解剖実習です。非常に高い集中力・緊張感を要する上、長時間立ちっぱなしで実習を行うので大変ではありますが、御遺体を前にし、人体を自らの手で紐解いていく作業は非常に興味深く、毎回新しい発見があります。
もう1つの重要な仕事が研究者としての仕事、研究です。こちらは、所属する分野や機関、上司の考え方などによって千差万別ですが、私の場合は自分自身の研究テーマを持ち、それに関する研究をしています。研究には、実験・調査によってデータを集めそれを解析する作業、その結果を学会発表や論文として発表する作業が含まれます。自分自身のスケジュールで仕事ができる反面、あまりにペースを緩めると最終的には自分で自分の首を絞めることともなります。自身に適度に鞭打ちつつ、たゆまぬよう仕事を行う自制心とバランス感覚、議論や意見をもらうことができる仲間をつくる人脈構築力が必要です。私自身の研究内容については、先日朝日新聞に紹介記事が掲載されましたので、そちらもご参照下さい。
(朝日新聞デジタル版 2019年10月3日掲載:http://www.asahi.com/articles/ASM936SN3M93PLBJ007.html )。
四天王寺高等学校・四天王寺中学校に入学した理由は?
子供の頃から、恐竜の化石を発掘する人・研究する人になるのが夢でした。ただ、どうすればそういう人になれるのかは小学生の自分にはわかりませんでしたので、将来自分の可能性と選択肢をできるだけ広げ得る中高はどこかと考え、四天王寺に入ろうと決めました。
大学選びから就職までの経緯は?
私は、大学から就職に至るまで、文学部・理学研究科・医学研究科、と色々なところを渡り歩いてきました。この話をすると返ってくるリアクションは大抵2パターンです。
ひとつは、「そんなことできるんですか?!」という驚き。もう1つは、「理転するなんて優秀なんですね」というお褒めの言葉。しかし私自身、今も昔も取り立てて優秀で勤勉な訳ではありませんし、恥ずかしながら中高時代に真面目に勉強した記憶もほとんどありません。大学選びにしても、その先に待ち構える就職先選びにしても、世の中の情報・概念には偏りがあります。周囲の意見や評価、一時の概念に固執していてはもったいないと私は思います。何か夢や目標があるのなら、そこへ向かう道は決して1本ではありません。広い視野で考えると、様々な道が見えてきます。自分の人生に責任を取れるのは親でも友達でもなく自分だけです。好きにするのが一番良いというのが私の考えです。
仕事柄、中学生や高校生たちの相談を受けることがよくあります。学校での数学や物理が苦手だから、惑星や生物等の研究者にはなれないのだろうか…、あるいは留学したいが成績が悪いから無理だろうか、といった諦め混じりの声を多く聞きます。こういった相談には、自分の可能性を自分で摘み取るなと答えます。大学は知識や人脈の裾野を広げる場所であり、就職予備校ではありません。あらゆる可能性とやり方があります。テストの点や成績は、ほんの一時の評価基準に過ぎません。世の中色々なやり方があります。自問自答して完結したり、親や周囲の人に相談するだけでなく、少し視野を広げてもっと色々な立場の人に話をきいてみることをお勧めします。そうして得たたくさんの選択肢の中から、自分に合いそうなものを選んだらいいと思います。
高校・中学での思い出は?
とにかく勉強が嫌いでした。今から思えば、生意気なこと極まりないのですが、テストや入試で私の何が測れるんだ、とずっと思っていました。勉強ができることと頭がいいこととは違うし、テストの点が悪いからといってその人は頭が悪い訳ではない。すべての人に多様な能力があり得手不得手があるのは当たり前なのに、こんなに画一的な方法で何を測るんだ、と思っていました。特に数学が苦手でたまりませんでした。大学の掲示板に自分の受験番号を見つけた時、これでやっと自分の好きなことだけ学べる!と、とてつもない開放感を感じたことは今でも鮮明に思い出せます。
勉強以外では、気の合う友人もたくさんでき、彼女らと学内や学外で楽しく過ごしました。四天王寺時代の友人達とは今でも交流があり、一生ものの友情を築くことができたかけがえのない時間だったと感じています。
高校・中学生活で身に付いたことは?
友人作りの楽しさと難しさが身に付いたように思います。多感な時期に様々な人と交流し、うまくいったこともあればうまくいかなかったこともありました。大人とは違って、感情をむき出しのまま人とぶつかり合う経験というのは、若い時期にしかできなかったことかと思います。
後輩(在校生・受験生)へのメッセージとアドバイス
先述しましたが、一時的な価値観に左右されず、自分の人生は自由に選択していってほしいと思います。偏差値の高い大学・学部が自分にとって良い大学とも限りませんし、四天王寺に入学することが将来何かになるための唯一の道という訳ではありません。世の中には色々な選択肢があり、そのどれもが一長一短だと思います。重要な選択を迫られる場面も多く、悩みも多かろうと思いますが、一途に考え込みすぎると視野は狭まってしまいます。できうる限りの選択肢を得て、その中で最適と思える道を選んでほしいと思います。